2021/03/16

INTERVIEW

【湘南PEOPLE】メキシコ、タイ、そして鎌倉へ移住。養生気功を伝えるマイカさんにインタビュー

養生気功をメキシコやタイで教えていたというマイカさん。現在は鎌倉やオンラインでレッスンをしながら伝えている。彼女自身、気功で体調不良が改善した経験を持つ。気功を始めたきっかけや、その魅力について語ってもらった。

——マイカさんは鎌倉で気功を教えていらっしゃいますが、そもそも気功を始めたきっかけを教えてください。
「はじめは気功ではなく太極拳を習っていたんです。20代はじめの頃にしばらく通っていたんですが、なんとなく途中でやめてしまって。数年ブランクがあったんですが、30歳を過ぎた頃に体調を崩してしまったことをきっかけに、再び太極拳を始めたんです。」

——太極拳と気功はどう違うんですか?
「どちらも“気”を扱う点では同じです。気功における武術の側面を高めたものが太極拳と考えるとわかりやすいかもしれません。」

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鎌倉の古民家レンタルスペースで気功を教えている

——原理は同じなんですね!体調を崩してしまったのは何か理由があったんですか?
「当時メキシコに住んでいて、ツアーガイドやホテルコンシェルジュとして働いていたんですが、スケジュールがハードだったのと、自分が本当に好きな仕事というわけではなかったのに、好きだと言い聞かせていたということだとが一番の理由だと今になって思います。」

——そもそもメキシコに移住したきっかけは?
「若い頃にバックパッカーでいろんな国をまわっていたんですが、その時訪れたメキシコに強く惹かれてしまって。『この国に住みたい!』と思って求人募集を探していたら、ちょうどツアーガイドの仕事を募集していたんです。運良く受かることができて、移住しました。そんな経緯だったので、仕事を選んでる余裕はなかったんですよ。それで体調を崩してしまったんだと思います。でも、メキシコには親の反対を押し切って来てしまったから、日本には帰るに帰れなくて。

ツアーガイドの仕事に続き、カンクンの五ツ星ホテルで雇ってもらうことになってコンシェルジュとして4年ほど経った頃、趣味のサーフィンをしている最中に事故に遭ったんです。頭を強く打ってしばらく動けなくなりました。もうこれは“休みなさい”というサインかなと思って、トゥルムというメキシコでもパワースポットとして知られる場所に移り住んで、しばらく休養。その時期に太極拳の先生を見つけて、身体の回復のために教室に通っていたんです。」

——太極拳や養生気功はそれだけ身体の改善に効果があるものなんですね。
「病気を治すということまでは言えませんが、体内の“気”を循環させることによって体質改善にはつながります。中国では3000年もの歴史がある伝統的な健康法です。気功には『内気功』と『外気功』という2種類あり、内気功は自分で自分の心と身体の健康維持していくもの。外気功は日本でわかりやすくいうと気功師さんのように気を用いて人を治療します。

これでいうと、私の養生気功は前者になります。いつも気功レッスンのクラスでも言っているのですが、間違って理解して欲しくないことは私は気功師さんではない、ということ。私が皆さんを治したりするのではなく、自分で自分の体を整えていくこと(メンテナンス)を一緒にやっていくのが、私の養生気功のクラスなんです。」

——そこから教えるようになった経緯は?
「太極拳以外にも回復のためにマッサージなどもたくさん受けていたんですが、自分を癒すということをやっているうちに、今度は自然と『人のことを癒したい』と思うようになっていったんです。トゥルムでは休養しながらもリゾートホテルでマネージメントのお仕事をいただいていたんですが、そのオフシーズンにタイ古式マッサージを習ってみよう、と思ってタイに行ったんです。そしたら、そこでもまたとても良い太極拳の先生に出会ってしまって。集中個人レッスンをお願いして、オフシーズンの2〜3カ月の間、毎日トレーニングを受けさせてもらったんです。

その先生から、『もし人に教えるんだったら気功をやりなさい』と言われて気功を改めて勉強しました。ヨガの先生でもある私のパートナーから、『教えることは学ぶこと』という励ましの言葉ももらい、それでメキシコに戻ってすぐ気功を教え始めちゃったんです。」

——何年くらい教えていたんですか?
「8年くらいです。ちょうど40歳になる節目に、もっと気功も突き詰めたいしそろそろ日本が恋しくなってきていたので、帰ろうかなと思ったんです。でも、日本とメキシコって文化も食も、街並みも人も、あらゆることが180度違うんですよ。メキシコはオープンなラテン系の文化。日本は気をちゃんと遣う一歩下がった文化だし、本当に『違うプラネットに来ちゃった!』ってくらい。メキシコにいる8年間は日本語もあまり話す機会もなかったので、まずは“慣らし”のような感じでアジアのクッションを入れたくて、一度彼と一緒にタイのチェンマイへ行ったんです。それからチェンマイで6年間、気功を教えていました。そのあと鎌倉に移り住んだんです。」

ーー鎌倉の地を選んだ理由は?
「メキシコ在住の頃にたまたまネットで葉山特集を見たんです。そこに住む人達が面白そうな人ばかりだなぁと思って、日本に戻ったら湘南地域に住みたいと思っていました。事故のあとサーフィンはやめてしまったけれど、やっぱり大好きな海の近くにも住みたかったので。」

鎌倉では、旅するヨガスタジオ『Yoga Kuukan』を主催。養生気功、ヨガをリアルとオンラインにて教えている。 また、タイ在住時に気功で着られファッションブランド『Maika Handworks』も立ち上げた。


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『Maika Handworks』では、化学繊維は使わず天然素材の生地を使用。デイリー服でも着られるおしゃれなデザインが好評だ 

ーー『Maika Handworks』の服、とても素敵ですね。
「気功用の服ってチャイナ服みたいなものしかないでしょ?締め付けがないゆるっとした服ならなんでもいいので、どうせなら自分が着たいと思う服がほしくて。素材もすべて天然のコットン。気功を始めてから自然とそういった肌に心地よい服が着たくなったんですよね。」

——気功をやり始めてから体調は良くなったんですか?
「徐々にですが、改善されていきました。東洋医学って、ちょっとした不調を改善するのがとっても得意。薬を持ち歩くほど頭痛や生理痛があったけれど、両方とも今ではまったくありません。でも、私も今の状態が『パーフェクトです!』というわけではなくって、教えているみんなと一緒に養生していきたいという感じなんです。だって年はどんどんとるわけだし、何もしなかったらやっぱりちょっとした不調って出てきちゃう。メンテナンスをしていく必要は誰しもあるんですよね。」

——何事も継続してあげることが大切ですね。
「気功は魔法ではなく養生のひとつなので、健康な身体をキープさせるために日常的に取り入れてほしいものなんです。マッサージなど他人の手を借りる時があってもいいのですが、その時は良くなってもまた悪くなったらまた通わないといけなくなる。だったら自分で改善できたほうがいいですよね。生徒さんにもよく、“自分が自分のお医者さんでいましょう”と話しているんです。気功は自分と向き合う時間と思ってもらえたら嬉しいです。」

——気を流す、自分と向き合うという意味ではヨガも同じですよね。
「そうですね。ヨガも好きでよくやります。でも、やっぱり日本人だから東洋医学の考え方のほうが身体には合っていると思っていて。ヨガやアーユルヴェーダの考えもとても素晴らしいけれど、養生のための食べ物などは四季の感覚が近い中医学から学んだほうが、日本人の身体にマッチするんじゃないかと思うんです。でも体は人それぞれ。なんでも自分が合うと思ったほうを選べばいいんだと思います。」

——誰でも簡単に家でできる気功法はあるのでしょうか。
「呼吸に耳をすませてあげるだけでも十分です。忙しいと呼吸は浅くなります。呼吸を深くすることによって、離れていた心と身体をつないでくれて、気も流れていきます。できるだけ5分間はやってみてください。それが習慣化されるだけでも、身体は変わってくると思います。」

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鎌倉の妙本寺にて

——気功のこと以外に、健康のために意識していることはありますか?
「食べ過ぎないことと、食間を6時間くらいは最低でも空けるということは大切にしています。腸を酷使してしまうと不調につながってしまうので。でもなるべくいろんなことに神経質にはならないようにしています。お肉も魚も、わりとなんでも食べますし、お酒も時々いただきます。でも飲み過ぎないようにするとか、何事もほどほどに、を心がけています。あとはその土地でとれた旬の食べ物をいただくということを大切にしています。そして冬の間は朝はゆっくりと8時くらいに起きて、白湯を飲みながら足湯をしたり。身体を温めることも大切にしています。春夏になると日が長くなるので、朝起きる時間は少しずつ早くします。そんな風に、季節に合わせたリズムで生活するようにしています。」

自然体で穏やかな雰囲気のマイカさん。
「若い時は感情の起伏も激しくて、ハメもはずしたりもしていました。体調が悪いことも多かったしいろいろ大変だったのよ」と笑う。だからこそ、「自分が改善できた体験をみんなにシェアしたい。私がやってみてよかった気功を伝えながら、みんなを誘って一緒に養生しているだけ」と話す。
そして気功とともに大事なこととして、「自分に噓をつかないことも大事にしてほしい」とマイカさん。


「まず自分に噓をつかず、やりたいこと、好きなことをしてようやく心と身体のバランスが整ってきます。そこの基盤がないと何をやっても不調はなかなか改善しないと思っているんです。私は母を20代で亡くしたので、『明日死ぬかもしれない』という気持ちで日々生きています。心のままに毎日を過ごし、それにプラス気功など、養生していくといいのではないでしょうか。」


少しでも毎日を元気で過ごして笑顔でいたい。そう願うのはみんな同じ。そのためのセルフケアが大切だという気持ちはビープルも一緒だ。 マイカさんが伝える養生気功は、不調を改善するのと同時にその状態を“キープする”ということを大切にしている。忙しい現代社会でゆったりとした静かな時間を過ごせる気功に、一度触れてみてはいかがだろうか。


【Youga Kuukan】
HP https://www.yogakuukan.com
Instagram @yogakuukan

【Maika Handworks】
HP https://www.maikahandworks.com
Instagram @maikahandworks


Text by Sonomi Takeo