2020/08/12

FOOD

話題のスパイス料理研究家・一条もんこさんが伝えたい、“スパイスの力”とは?

Photo by Naoki Yamashita

暑い夏にカレーがおすすめな理由…それは、何種類ものスパイスが入っているから!夏バテしやすい時期に取り入れることで、食欲を増進させ、元気を与えてくれます。今回は、メディアで引っ張りだこのスパイス料理研究家・一条もんこさんに、そんなスパイスの魅力について語ってもらいました。

――一年間にカレーを約800食は食しているという一条さんですが、カレー愛に目覚めたきっかけを教えてください。
「新潟の自然あふれる場所で生まれ育ったんですけど、養豚場や養鶏場、畑も祖父母が営んでいたため、自給自足で食材はまかなえる環境。家庭料理がわりと本格的で、カレーも鶏ガラスープから出汁をとるほど。とにかく食べ物が全部美味しくて、ごはんを食べることも好きだったし、料理をするのも自然と好きになりました。
なかでも食材や作り方、香辛料によって表情が変化するカレーが好きで、いろんなカレーに挑戦するようになって。それが小学3年生くらいの頃です。
スパイスを使って本格的にカレーを作り始めたのは短大生の時。でも正直、最初は全然美味しく作れなくて(笑)。短大では栄養学を学んでいたのですが、まわりのいろんな人に聞きながら、どうすれば美味しくできるのかを研究していました。」

――そこからスパイス料理研究家になるまでの経緯というのは?
「料理は趣味と思っていたので仕事はまったく別のことをしていて、普通に会社員でした。それこそ会社経営なんかもしていたので、20代はいわゆるイケイケどんどんでしたね。外で遊ぶのも大好きで。反面、料理やカレー好きは変わらなかったので、外で派手に遊びながらも家では家庭的な料理をつくるという、ギャップのある生活でした。でもご縁あって料理研究家の川上文代先生のアシスタントさんをさせていただくことになって、会社員と平行して修行させてもらっていたんです。最初は料理研究家を目指していたんですが、先生にある日、『あなたはカレーの道を極めたほうがいい!』とアドバイスをいただいたことをきっかけに脱サラ。30歳の時、カレーをイチから学ぶためにカレーが有名なフレンチのお店で修行させていただくことになりました。かなりのスパルタでしたが(笑)、3年間みっちり修行して、それから本格的なインドカレー店でも働きながら学んだり、カレー大學で基礎を学んだりしながら、カレー一筋の道へと進んでいきました。」

――一条さんにとってスパイスの魅力とは?
「カレーを食べたあと元気になるのは、スパイスの力があるからなんです。それだけスパイスにはいろんな効果効能があって、心身のあらゆる不調の改善にも繋がるんです。そして香り!スパイスの種類は香り・辛味・色味の3種しかなくって、その大半が香り。スパイスの香りは食欲増進という効果もありますが、脳を刺激していわゆる幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促してくれるんです。幸せホルモンによる癒しの効果はストレス軽減にも繋がるので、ほんの少し料理や飲み物に足すだけで、精神的にも落ち着きますよ。あとは、スパイスは漢方やハーブのような健康効果をもたらす働きがあるので、身体の状態や季節によって取り入れることで、健やかでキレイに効くライフスタイルを目指せるということ。さらに調味料として、料理の食材、香りづけとしてなどいろんな取り入れ方ができるのも魅力です。」

――スパイスが持つ具体的な効果・効能って?
「代謝を上げたり免疫を高めたり、老化を防ぐなど、さまざまな効能があります。薬のように直接的にどこかを治すというよりは、マイナスになってしまった部分を改善して、体のバランスを整えてくれるもの。漢方や薬膳などと考え方は同じです。私の場合、若い頃は吹き出物に悩まされていたのですが、スパイスの正しい知識を知り、日常的に取り入れるようになってすっかり改善されました。」




【主なスパイスが持つ効果効能とその特徴】
クミンシード
カレーの香り代表格。消臭、殺菌、防腐作用があり、整腸作用も期待できる。コレステロールの吸収を抑えるとも言われています。

コリアンシード
パウダー状にするとオレンジのような柑橘系の香りに。消化器官へ働きかけるハーブとして有名。華やかな香りは味噌汁やパスタに一粒入れるとひと味違う味わいに。

クローブ
香りが強いため、一度に1〜2本しか使わないことが多い。血液循環、新陳代謝をよくする働きがあり、細胞を活性化してくれます。単品では使わず、煮込み料理などに使用することが多い。

スターアニス
独特な香りは中華で使うことも多く、お茶やチャイなどに入れてもおいしくいただけます。消化器系の調子を整える働きがあり、「ビネン」という成分には気持ちを落ち着かせる作用も。

ブラックペッパーホール
発汗作用や利尿作用があり、体内の毒素排出でデトックス効果が見込めます。代謝を上げて内臓を温めてくれる作用があるため、冬にも◎。お好みでごはんと一緒に炊くと、お米の甘味とブラックペッパーの辛味が絶妙な味わいに仕上げてくれます。

カルダモン(ホール)
「スパイスの女王」といわれているほど、香り豊かなスパイス。脳のホルモンを活性化させるいわゆるハッピーホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促す効果も。

トウガラシ(レッドペーパースティック)
発汗作用における基礎代謝の活性化、脂肪燃焼効果の促進、血行促進、免疫力の向上効果があります。発汗することで体温を下げ、スッキリとするので、夏は特に摂取したい。


スパイスにおける講演にもひっぱりだこの一条さん

――スパイスは、カレー以外にどんなことに活用できますか?
「まずはお茶やチャイ、お酒に少量入れるなど、飲み物に少し足すということから始めると挑戦しやすいと思います。あとはサラダやパスタにスパイスの粉末をふりかけたり、煮込み料理、意外とお味噌汁や納豆などの和食にも合いますよ。」

――スパイスを買う時、いい選び方はありますか?
「お近くのスーパーのものなど、なんでもよいと思います。たくさん使う方は大きい袋に大量に入っているものをまとめ買いしてもよいと思うし、初心者さんで少しずつ試してみたい方は、小分けで売られているものを買うといいと思います!」

――これからの夏、スパイスを活用してどう過ごすと良いか、アドバイスがあればお願いします!
「暑い夏は、クーラーなどで冷えた内臓を温めたり、循環を良くしてくれたり、ほてった身体を冷やしてくれたりしてくれるスパイスは本当におすすめ。スパイスって一見難しそうに思うかもしれないですが、実はいろんな料理や食材に合うもの。ちょこっと足すだけで味に深みが出たり、香り高くなるので気軽にチャレンジしてみてください。そしてスパイスを一気に、手軽に摂取できるのがカレーです。カレーなら自分の好みの食材も入れやすく、アレンジも自由自在。この夏はスパイスたっぷりのカレーをたくさん食べて、元気に過ごしてください!」

今年は例年より、おうちで過ごす時間も多い夏になりそう。そんな時はスパイスを使ったカレーなどの料理で夏バテを吹き飛ばして、幸せホルモンを活性化させましょう!


一条もんこ(Instagram:monko1215
雑誌やテレビ、web、飲食店のカレー及びスパイス料理の監修、レシピ開発やプロデュースなど、多方面で活躍するスパイス料理研究家。年間800食近くカレーを食べ、今まで食べたレトルトカレーは3000食以上、カレー食べ歩き店舗数は1300店舗以上。2011年にカレー研究会を立ち上げ主宰、年に数回交流を合わせたカレーイベントを実施している。
スパイス料理とカレーの料理教室『Spice Life』主宰、新刊『おうちで楽しむスパイス料理とカレー』他、YouTube『もんこのカレー教室TV』、宅配専門カレー店『一条もんこ先生のカレー診療所(全国23店舗)』

Text by Sono Hirose