2020/08/06

INTERVIEW

今、私が追い求める道|モデル・ケリーさんが今伝えたい、食の大切さ

Photo by 長谷川 梓

モデル・ケリーさんと言えば、ヘルシーな女性の代表的存在。私たちはいつも、数々のメディアで彼女の清々しい笑顔から元気をもらっている。
しかし今に至るまで、彼女は私たちには想像できないほどの努力をしてきた。そこまで努力できたのは何故か、そして今彼女はどんな未来を描いているのだろうか…


――ブラジルで育ったそうですが、日本に来たのはいつ頃ですか?
「15歳のとき。父が日系ブラジル人、母がイタリア系ブラジル人で、ずっとブラジルで育ちました。もちろん家族での会話はポルトガル語だったので、日本語に英語も全く話せなかったのですが、出稼ぎのために家族で日本に来ることになったんです。」



――大変なことも多かったのでは?
「大変なことしかなかったです。ブラジルでは日本人だと思われていたし、日本に来たらまた外国人扱い。学校でいじめられるのが怖くて、泣きながら『行きたくない!』って親に訴えました。結局通信学校に通うことにし、アルバイトをしながら過ごしました。地方の工場で作業する仕事です。生きているという感覚なく毎日を過ごしていた感じ。そんな日々から抜け出したい思いから、勧められていたモデルをやってみようと、小さな事務所に入りました。でも写真を撮られるのが苦手で、撮影に行っても恥ずかしくて表情を作れないし、ポージングも決まらない。言葉だって流暢に話せなかったので、大変でした。体型を維持する方法も分からず、太ったり痩せたりの繰り返しで、どんどんストレスが溜まっていっちゃって…。その時考えていたのは、『お金を貯めて、早くブラジルに帰ること』、ただそれだけでした。そうやって18歳くらいから3、4年は頑張ったかな。」

――暮らしたことのない異国の地で、すぐに“居場所”を見つけるのは難しいことですよね。それから無事にブラジルには帰れたのですか?
「はい、3、4年後に無事に帰りました。でも親のビジネスがうまくいかず、結局また日本に戻ってくることに。」

――そうだったんですね。日本のことはあまり好きではなかったのでは?
「いえ、そんなことはありません。日本にいた時、仕事に関しては厳しいですが、それ以外は優しい人が多かったです。自分の中でモデルとして生きていくための方法がわからなかっただけで、周囲は温かかった。二度目の日本は、友人の紹介で新しい事務所に入ったら、そこのマネージャーが『信じているから頑張ろう』、そう言ってくれたんです。当時はまだ若かったし、やんちゃだったから、褒められると単純に嬉しかったですね。そこから本格的にモデルの仕事をスタートすることになりました。それで、ブラジルに帰った時に太ってしまった体を、2ヶ月で戻しました。」



――どのように体を戻したのですか?
「前に成し得なかった悔しさから、『絶対に痩せてやる!』という気持ちがあったんだと思います。とは言っても、実はスポーツジムは続かなくて。体験で行ったキックボクシングがすごく楽しかったの!当時キックボクシングの世界には女性が殆どいなくて、汗臭い男性だけのジムでしたね(笑)。2ヶ月ほぼ毎日通い、サラダばかり食べていたら、気がついたら痩せていた感じ。それから『PINKY』という雑誌の専属モデルオーディションを受けたら、決まったんです!すごく嬉しかったです。当時のマネージャーが、『20歳になるまでに、どこかの媒体の専属モデルになろう』と目標を作ってくれ、それが20歳前に叶ったんです。あの頃から、毎年目標を立てるようになりました。」

――そこから気持ちの変化もあったのでは?
「性格が大きく変わった時だったと思います。元々恥ずかしがり屋だし、辛い経験もたくさんして、ネガティブな声が聞こえると、どんどん暗い気持ちになっていた。でも少しずつ褒めてもらえるようになり、それが自信に繋がり、楽しいと思うようになっていきました。そうそう!その頃から、『他にもスポーツをしてみたい!』と思ってヨガを始めたんです。」

――キックボクシングとはまた全く違うスポーツですね。
「そうですね。初めてレッスンを受けた時に、フワッと気持ちよくなり、最後の“シャバーサナ”のポーズで寝てしまったんです。その感覚が忘れられなくて。呼吸をすることで冷静になり、自分を客観的に見られるようになりました。ヨガにはまり出した頃から、下着ブランドの専属も決まったりして少しずつ仕事が忙しくなりました。もっと体を鍛えなきゃいけないと思い、苦手だったスポーツジムを再開。でも前よりも体幹ができ、筋肉もついていたので、ジムも楽しくなったんです。パーソナルトレーナーの方にお願いして本格的にスタートしました。やっぱりモチベーションが大事なんですね。今はその日の気分や体調に合わせて、キックボクシングとヨガ、ジムを使い分けています。」

――元々スポーツは得意だったのですか?
「全く!私も含めて家族は皆ぽっちゃり体型で、スポーツは苦手でした(笑)。」



――続ける秘訣は何かありますか?
「体を動かすこと、続けることは大事だけど、ライフスタイルの一部になるまでが大変ですよね。時間はかかると思いますが、当たり前になるまで頑張ることかな。体を動かすと体調が良いし、体力つくし、好きなものを美味しく食べられるし、すっきりするし!心も体も健康でいるためには、必要なことだと思います。あとは理想の女性を検索したりして刺激をもうのも良いですよ!」

――最近は「CLASSY」で食連載をしたり、SNSでも積極的に食について発信されていますね。元々料理は得意だったのですか?
「運動と同じく、料理も全然(笑)!最初に痩せようと思った時は知識もなく、サラダを食べるくらいしかできなかったのですが、それこそ運動を続けていくためには食生活を見直す必要があるなと思って。本や雑誌で少しずつ勉強をしました。例えばトレーニング後は何を食べたらより効果が出るのか、とか。女性って色々な悩みを抱えていると思うのですが、やはり食生活の改善が一番効くと思うんです。食べたものが体を作っているので、肌の状態だって変わるし!もっと年齢を重ねたときに大きな病気をしたくないから、今から気を使って体を大事にしたいと思うようになりました。」

――本格的に学び出したのはいつ頃から?
「最初は魚と野菜中心の食生活を送っていたのですが、5年くらい前からかな?ビーガンの世界に興味を持ち、『もっと上手になりたい!プロフェッショナルに学びたい!』と思うようになり、自分で調べて見つけたマクロビ教室に申し込んで、半年間授業を受けました。何の知識もなかったのですが、すごく奥が深くて。結局2年くらい勉強しました。そうしたら、“ローフード”の世界にのめり込んでいきました。体にすごく合っていたんですよね。でもローカカオやアサイーなどのスーパーフードは日本ではあまり買うことができなくて。この先どのように深めていけば良いかと思っていた時に、バリで活躍する日本人のリトリートシェフ&ローフード講師をしている田中さゆりさんという女性がいることを聞いたんです。ちょうど来日してワークショップをやるということで、受けに行きました。そしたら彼女の料理が驚くほど美味しかったの!バリで彼女の講座を受けるべきだと思ったのが4年前。でもまとまった休みがなかなか取れなくて、一昨年にようやく行けたんですよ。」

この時マネージャーの方が「ケリーは言い出したら必ずやる人ですからね。」そう言って2週間のまとまった休みを許可したことを、笑いながら話してくれた。

――念願の田中さゆりさんの授業はどうでしたか?
「世界中から年齢も職業も違う人が集まってきていました。大人になってからそんな経験はしたことがないので、緊張しましたね。でもやっぱり素晴らしくて、さゆりさんの他のクラスも受けたくなりました。それから4回くらいバリに通いましたよ(笑)。やっぱり好きなことを学ぶとウキウキする!同じ志を持つ大切な友人もできたし、本当に良い経験をいただいたと思います。」

――昨年末はLAでも料理修行をされていましたよね。


(提供:ケリーさん)

「世界的に有名なローフード&プラントベースのシェフであるマシュ・ケニーさんという方が日本に来た時、ご縁があってお会いすることができたんです。私は彼の本も持っていて、尊敬する方だったので、もっと学びたいということを相談したら、「Welcome!」って。彼は今はレッスンを持っているわけではないのですが、テストキッチンでメニュー開発をする場を間近で見せてもらったりして、1ヶ月半修行させてもらいました。毎年年末はブラジルに1ヶ月帰るのですが、そっちを短くして、今回はLAに。ママは寂しそうだったけど(笑)!」



――LAではどんなことを学んだのですか?
「“インスパイア”かな。『こんな食材をこうやって使うの?』みたいなことを。本当に良い刺激をもらいました。」

――学んだことを、今後どう活かしていきたいと考えていますか?
「モデルという仕事をとおして、食の大切さを伝えていきたいです。自分の体調や体型を、食が変えたということは大きい。『料理をするのが面倒!』って思うときもあるけど、できるときにちゃんとやっていると、必ず体は答えてくれます。そんなことを伝えていきたい。」

これはモデル・ケリーさんの15年ほどをギュッとまとめた話だ。彼女は自分と向き合いながらモデルとして体を作り、そして料理を学んだわけだが、その間に日本語と英語も習得し、通訳を入れずに話すようになった。きっと並大抵の努力ではなかっただろう。しかし、「自分はこんなに頑張ってきた」と自慢するのではなく、「大丈夫、大丈夫!」、そう誰かの背中を押すように、自分の楽しい人生を優しく、明るく話してくれた。彼女のように本気になれば、誰だってこれからの人生をもっと輝くものにすることはできるはずだ。
しかし、突き進む性格のケリーさん、ちゃんと休むときはあるのだろうか…

――ケリーさんはストイックなイメージですが、ダラダラする日はある?
「ありますよ!仕事をして体を鍛えて…が日々のルーティンですが、日曜日は家の掃除をして買い出しして、料理をまとめて作って、その後ダラダラするかな。」

――それってダラダラ(笑)?
「あ、でも、大事な撮影に向けて体作りしたり、食事制限した後は、運動もせずにダラダラしてテレビ見てるだけの時もある!そういう時間を作るのも大事だと思うから。どちらかと言うとアクティブなタイプだと思う。あれもしてこれもして…って頭の中がずっと動いている方。でもたまにはオフを作らないとですよね。」

新型コロナウイルスによるステイホーム中も、ケリーさんは私たちに食の大切さを伝えるべく、インスタライブでクッキングを何度も披露してくれた。今後もきっと進化を続けながら、様々な方法で私たちに笑顔を与え続けてくれることだろう。



Kelly(Instagram:kellymisawa
モデル。ブラジル・サンパウロ出身。
健康的な明るさが魅力のモデルとして、 ファッション誌のレギュラーモデルの他、 ファッションショーや広告、TV等、様々なメディアで活躍中。 ローフードシェフ、RYT200(国際ヨガライセンス)等の資格を持ち そのヘルシーなライフスタイルも女性から高い支持を受けている。 趣味はワークアウト(パーソナルジム、キックボクシング、ヨガ)、 スキューバダイビング、料理、読書、旅行。

・「ケリーの美トレめし」(光文社)9/28発売予定!

Text by 関 早保子