2022/01/17

ORGANIC DICTIONARY

「有機」「無農薬」「減農薬」の違いを正しく知ってますか?

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野菜やコーヒーなど、食材を選ぶ時に「有機」「無農薬」「オーガニック」などと書かれている商品をよく見かけますが、その違いについて正確に知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回はその言葉の意味を解説します!



もともと「オーガニック」と「有機」は同じ意味
有機栽培(有機農業)とは、「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」のこと。

自然との調和を大切にし、化学肥料や農薬に頼らず、丁寧な土づくりをすることで、そこに生息する多様な生き物と共生しながら行う農業を意味します。
オーガニック(organic)を日本語に訳すと「有機の」「有機的な」「化学肥料を用いないで育てた」「有機肥料を用いた」という意味に訳されます。基本的にはほぼ同義語です。


有機栽培とはどんな農業?
有機栽培の「有機」は、「堆肥(たいひ)」を指します。堆肥とは、家畜の糞などの原料を微生物の力で分解したもの。最近では、生ゴミなどコンポストに入れて作った堆肥を家庭菜園に使う方も増えています。
有機栽培は、農薬や化学肥料を使用せず2年以上経過した健康な土で栽培を行い、環境への負荷をできる限り少なくする方法で生産されたものが有機農産物と定義されます。
商品に「有機栽培」「オーガニック」と表示するためには以下のような一定の基準をクリアする必要があります。

• 化学的に合成された肥料・農薬を避ける
• 遺伝子組換え技術を利用しない
• 種まきや植え付け前の2年以上、有機肥料で土づくりを行った田畑で生産されたもの

この基準は国によって異なりますが、日本でにおいては「有機JAS規格」が採用されており、この基準を満たした商品にだめ「有機JASマーク」をつけることができます。
消費者が一目見て「有機農産物」と判断できるためのマークです。
綿花製品で「プレオーガニック」という名称が当てられた物が見られますが、有機農法を始めてすぐの物は残留農薬などの可能性から有機栽培認定ができないため、認定をもらうまでの移行期間に作られたものを「プレオーガニック」と呼びます。有機栽培を行ったとしても開始から一定期間を過ぎないと公には「有機農産物」とは認定されません。


有機栽培と無農薬栽培、減農薬栽培は何が違う?
「無農薬栽培」とは、生産期間中にまったく農薬を使用しない栽培方法のこと。
実は、「無農薬栽培」や「減農薬栽培」は農林水産省が作成した「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」により原則的に表示が禁止されています。
なぜならば、無農薬で土壌にわずかでも農薬が残っている可能性があったり、近隣の畑から風に乗って飛んでくる可能性も考えられるから。
土壌を検査して認定する仕組みがない状態で「無農薬栽培は完全に無農薬である」としてしまうことは誤りということになってしまうため、「無農薬」と表示することは禁止されているのです。
「減農薬栽培」とは使用する農薬を削減して栽培する方法を言いますが、無農薬栽培と同様、明確な基準や認定機関はありません。
無農薬・減農薬栽培の表記は禁止されていますが、農薬をなるべく使用しない栽培方法のことを総称して「特別栽培農産物」という表現に統一されています。特別栽培農産物の定義は、「農産物が生産された地域の慣行レベルに比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下」であること。
また、有機栽培やオーガニックと表示されていれば「無農薬」ということではありません。
同じ働きをする農薬でも、天然原料によるものはOKで化学合成されたものはNGという考え方があるため、微生物を有効成分とする殺菌剤など、「有機」表示のできる農薬が指定されています。


このように、「有機」「無農薬」と表示されていると「なんとなく安心」と飛びついてしまうかもしれませんが、漫然と食材を選んでしまうのではなく、必ずしもすべてが安全とは言い切れません。正しい言葉の意味を知ってから、その裏側や背景を見ながら判断をすることが大切になってきます。
農薬という目線だけでなく、信頼できる農家さんを見つけるなど自分自身の目線で選ぶことが重要。今日から食材を見る時、意識を変えて選んでみてください。



<参考文献>
農林水産省ホームページ
ジブン農業
マイナビ農業

Text by Sonomi Takeo