2021/10/02

INTERVIEW

湘南ピープルの集いの場所をつくる、バリスタ・Akinaさんインタビュー

【湘南PEOPLE】
今回インタビューしたのは、湘南に住むバリスタ・Akinaさん。人気のコーヒー店で働いた後、独立してからはお店を間借りしながらコーヒーを提供している。


「必ずと言っていいほど知り合いと出会える」。
そんな湘南ピープルの集いの場所を生み出しているのが、コーヒーバリスタのAkinaさん。Akinaさんは鎌倉・八幡宮近くの人気のコーヒー店『VERVE』に3年ほど勤め、今年2月に独立。
お店を間借りしてコーヒーを提供したり、ワークショップやイベントでコーヒーを淹れたり、8〜9月は月・火限定でかき氷屋「甘氷屋」をオープン。
新鮮なフルーツや自家製のシロップをかけたかき氷が美味しいのはもちろん、Akinaさんの朗らかな人柄もあり、いつもお店は大盛況だ。

――現在、お店を開くときは他店を間借りされているとのことですが、自身のお店をオープンする予定は?
「今のところ、自分のお店を持ちたいとは思っていないんです。一人でお店を経営するというよりは、誰かとコラボレーションしたり、新しいことにチャレンジしたり、その時々で形態を変えていくほうが今の自分には合っていると感じていて。特に湘南の人たちは自分で何かをやっている人が多くて、魅力的で自立している方がたくさんいるのですが、そういった方々に支えられてこそ今の自分がある、という感じなんですよね。だから一人でお店を開くというイメージがあまり沸かなくて。」

――Akinaさんのことを、Akinaさんのまわりの方々がいつもインスタでシェアしていたり、応援されている感じが伝わってきます。
「本当にそうなんですよ(笑)。みんなが宣伝してくれるので、とてもありがたいです。自分は人との距離感がわりと近いほうなので、すぐ仲良くなれるというのもあるかもしれません。4年前に『VERVE』がオープンしたと同時に鎌倉に引っ越してきたのですが、それまでは湘南を訪れたこともなく、知り合いはゼロの状態でした。でも働いているうちにお客さんとも仲良くなってどんどん繋いでくれて、自然とコミュニティができて今があるような感じです。」

null

――湘南に移住される前からバリスタのお仕事をされていたんですか?
「いえ、IT系の仕事をしていて、プログラマーとして新宿のオフィスで働いていました。コーヒー自体はとても好きで、コーヒースタンドの知らない人同士でも気軽に話せるような空気感も好きでしたけど、まさかバリスタになるとは思っていなかったですね。」

――何がきっかけで転職したんですか?
「オフィスの近くにVERVE新宿店があって、通ううちにお店の人と仲良くなって。実はブラックコーヒーが苦手でラテ一択だったのですが、ある日仲良しの店員さんに勧められてブラックを飲んでみたんです。その時初めてブラックコーヒーが『おいしい!』と感じたんです。それが自分にとっては衝撃的で。そこからいろんな種類・産地のコーヒーを飲むようになり、コーヒーの本を買って自分でも淹れるようになりました。そんなある日、『VERVEの鎌倉店がOPENする』と聞いて、『私も行きます』と即決(笑)。会社辞めてすぐ鎌倉へ移住しました。」

――すごい行動力ですね!
「自分でもびっくりです。でも、ITは好きだったのですが、とても激務で正直しんどさは感じていたんです。若いうちはいいけれど、持続可能じゃないなって。アウトドアそうに見られるのですが実はインドア派で、そこまで行動力があるタイプでもないのですが…。何か大きな決断をする時は迷いなく決められるほうなので、自分にとってそういうタイミングだったのかもしれません。そこ(VERVE)で初めてちゃんとバリスタとしてコーヒーを学びました。」

――引っ越されてみて、どうでしたか?
「東京と比べると時間の流れがゆったりしているので、せかせかしなくなりました。都内に住んでいた時は毎日満員電車に乗っていましたが、それが当たり前だったし、それ以外のチョイスがあることも気づかなかった。でも湘南へ来て、もっと自由に、心地よく生活していいんだ、と感じられました。以前、L.A.へ旅した時、毎日海を眺めに行っていたし、こういうライフスタイルって素敵だなって思っていたんです。でもL.A.に行かずとも、都心にも近いのに海も山も近くにあるなんて、本当に魅力的な街だと感じます。」

――今年2月に独立されたとのことですが、不安とかはなかったんですか?
「この時も迷いなく、スパーン!と辞めました(笑)。お店は楽しかったけれど、そろそろ自分自身で挑戦してみたいと感じていたし、次のステップに向かいたかったので。辞めて1カ月ほど休んで、それからお店の先輩だった望月さんという湘南コーヒー界の神と呼ばれる方がいるのですが(笑)、彼が『SO SAN』というワインや日本酒の店を間借りして、土日限定で『コーヒーと朝食』というお店をしていたので、お手伝いをするようになりました。その流れで月火水は私がそのまま間借りすることになって、『鎌倉一朝が早いコーヒー屋』という形でお店を開いていました。
意外にも鎌倉って早朝にオープンするコーヒーのお店ってあまりないんですよ。遅めスタートで早めの店締まいのお店が多くて。そこで6時半から営業するコーヒー店にしました。そこは現在一旦ストップしているのですが、秋頃また再開したいなぁ、とは思っています。」

――8、9月はかき氷屋さん『甘氷屋』をやられていたんですよね?
「はい。こちらもお店を間借りさせていただき、毎週月火限定で提供していました。旬の果物と自家製シロップでつくるかき氷は好評いただいていて、夏場は何度も来ていただける方も多くいらっしゃいました。」

null

実は昨年の夏にも、葉山を拠点に活動しているユニット「葉山家族」(血縁という枠にとらわれず家族のように集まった葉山が大好きな仲間で構成されたイベントユニット)さんと「engawa café & restaurant」がコラボしたかき氷専門店『甘氷屋』にAkinaさんも参加。
大盛況により、今年は鎌倉でオープンするという流れになったそう。
さまざまなことにチャレンジしているAkinaさんですが、今後の予定は決まっているのだろうか。

「実は、次はどこでやるかまだ決めてなくて。お店以外ではワークショップやイベートでコーヒーを提供したり、頼まれればおうちまでコーヒーを淹れに行ったりもしています。そういったことは継続しつつ、次のことを模索中です。
あとは焙煎した豆をオンラインで販売したいとも思っています。こだわりたいのは、産地はもちろん、もう少し掘り下げて、『どこの農園の豆か』ということにもフォーカスして売りたい。農家にちゃんと対価を払われているのか、ダイレクトトレードかどうかなど、サステナビリティを大切にしたいと思っています。買い手側も、せっかくならば少しでも地球にいいことをしてると思えたほうが、心地よいと思うんです。地元の方ならば、直接自宅まで届けたいなとも思っています。」

null
夏至の完全予約制イベントでもコーヒーを提供

――プレゼントにも良さそうですね! 
「そうなんです。実はギフト用の販売のための企画も今考えていて。地元のフラワーショップや、素材・手作りにこだわっているグラノーラをギフトセットにしてみたいなと思っているんです。今はコロナ禍でストレスフルなご時世だからこそ、心が豊かになるようなサービスを提供したいなって。コーヒーのバリスタになったのも、誰かが幸せになったり、楽しい気持ちになってほしいという想いが根本にはあります。」

――湘南だからできることもありそうですね。
「本当にそうで、湘南は本当に素敵な人がたくさんいて、何かのスペシャリストが多い。健康についても詳しい人が多いから、不調を感じた時に相談できる相手がまわりにたくさんいるんです。自分はいつか、不死身になっちゃうんじゃないかな?ってくらい(笑)。
『Coffee Connects People』という言い方をよくするのですが、コーヒーは人と人を繋げる場所でもあるので、たまたまお店にいらしたお客さんが、例えばそういった悩みや不調を抱えていたら、その道のスペシャリストを繋げたり、紹介することもできますよね。美味しいコーヒーを淹れることはもちろん、そういった出会いのある、温かい場所にしていきたいです。」

null
夏至の完全予約制イベントでコラボレーションした3人(左から鎌倉の花屋『Pine Village』のちはるさん、プラントベースを中心に食を提供しているもとみさん、Akinaさん)

――今後、Akinaさんが目指していきたい夢や目標はありますか?
「う〜ん、実はそんなにないんですよね。強いて言えば、湘南のアイドルになることでしょうか(笑)。近い未来でやりたいことはたくさんありますが、その時やりたいと思ったことを、少しずつ実現していけたらと思っています。来月自分が何をしているのかわからないくらいなので(笑)。」


「自分は間借りしているくらいがちょうどいい」とAkinaさんは笑う。
コーヒーは人と人を繋げるツールであることはもちろん、お店がいつも賑わっているのはAkinaさんの魅力があってこそ。
次はどこでAkinaさんと出会えるのか? 今後の挑戦を楽しみにしていたい。

Instagram:@dazzle_247

Text by Sonomi Takeo