2021/06/07

INTERVIEW

【湘南PEOPLE】平川景都さんが『子宮の叡智』を伝え続ける理由とは

生まれも育ちも鎌倉という、平川景都さんにインタビュー。
ブレスワーク(※)やヒーリングスペースのファシリテートのほか、“子宮の叡智”の発信をしている景都さんにお話を伺ってきました。

(※)…意識的な呼吸を続けることで、心や体のさまざまなブロックを解き放つセルフ・ヒーリング。

——景都さんが子宮の叡智を伝えるようになったきっかけはなんですか?
「私が発信を続けているのは、『月経』を通して女性性を伝えることで、多くの女性がエンパワーメントできたり、自分を愛し、受け入れ、もっと生きやすくなるんじゃないかと思ったから。それに至るまでの大きなきっかけはあまりなくて、こういう(女性性に関する)発信をしている自分の姿を夢で見たり、女性性を学べる場へのお誘いがあったり、神様からの啓示というか、何かのお導きがあったかのように自然な流れだったんです。」


——具体的にどんなことを発信しているんですか?
「主に子宮や月経についてのお話をシェアするワークショップやオンラインウェビナーを開いたり、SNSでの発信が中心です。体の中では何が起こっているのかなど、子宮や月経のことを知ることで、内なる女性性と深く繋がり、健やかで自分らしいライフスタイルを送ってもらうための知識をお伝えしています。」


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——フェムテックなどの市場は増えていますが、そもそもの仕組みや『なぜ大切なのか』ということは、あまり知られてないかもしれません。
「そうなんです。学校ではまだそこまで教えてくれません。特に日本は(生理などの話は)タブーとされていますよね。私はヒプノセラピーやレイキなど、ヒーリングのワークを10代の頃からしているのですが、個人セッションをしている中で、クライアントさんそれぞれの悩みは違うのだけれど、根底にあるのは“男性性”や“女性性”というところにあるのではないか、ということが見えてきたんです。中でも“女性性”って大きなテーマな気がしていて。いまの世界は、かなり男性性に傾いていると思うんです。そうなると女性性が抑えられてしまって、もともとあったバランスが崩れてしまい、あらゆる不調に繋がってしまいます。」

——女性の体が男性性に傾いていったのはなぜなんでしょうか。
「やはり長い歴史の中で、男性性優位社会が続いていることに要因があると思います。男性性は陰陽でいう“陽”で、すごく生産性を求めたり、活動的で、とても直線的なイメージなんです。女性性は“陰”。陰は休息のエネルギーで、とても感覚的で、見えないものを見る力もある。スパイラル状に円を描いて進んでいくイメージです。

性別関係なくこの2つを人は持っているもの。このバランスは授かったものなので、自然と同じでうまくバランスがとれていることで成り立つんです。ただ、これは持論なのですが、自然に沿って生きていくと、誰かが何かを“独占する”ということができないんですよね。本当はこの地球、土地は誰のものではなくて、誰かが独占したり所有するものではないのですが、人間は『独占したい』と思ってしまった。この『コントロールしたい』という欲から、男性性優位の時代が始まったのだと思っています。」



——自然の摂理に抗わないことが大切なんですね。
「月経のサイクルも、四季に例えられると思っています。月経中は冬、月経後から排卵期までが春。排卵期は夏で、そのあとの月経までが秋。自然においても種から芽になり、そこから朽ち落ちて、また種になって…という自然の摂理と同じ。常に生と死のサイクルを行き来しているんです。この周期のなかで脳や骨盤、顔の状態も変わります。たとえば『春夏』は気持ちがオープンになり、社交的になり、本能的に受精するためにパートナーに出会うための準備に入ります。気持ちもおおらかになりやすいですし、顔も体型もキュッと引き締まり、肌ツヤもよくなってきます。

排卵期が過ぎたあとの『秋』は、『自分が妊娠しているかも』という仮定で過ごします。これも自然な現象で、自分が妊娠しているかどうかを体が認識するのに1週間はかかるからなんです。卵を守ることが一番のプライオリティになるため、人と会いたくなくなったり、部屋でゆったりしたくなったりと、『春夏』に比べて内向的な気持ちへと変化していきます。いわゆる“巣作り”の時期なんです。そして月経が始まる『冬』はいつもよりも休養が必要となります。」

——人間の体は非常にうまくできているんですね。
「本来はこのリズムに沿って、月経に向けてスローダウンしていくのがベストです。ですが、現代の女性はそういった周期に合わせて過ごすがなかなか難しくなっているのが現状です。骨盤って、リラックスすることでゆるまっていくんですね。その時も、まず先に右側の骨盤からゆるみ、次に左側の骨盤がゆるんでいきます。排卵が終わって『秋』に入っているのにスローダウンしないでいると、右側はゆるんで開いていても左側がなかなか開いていかないんです。」

——そうなんですね!知りませんでした。
「そして骨盤が開いてない状態で生理が始まってしまうことで、生理痛に繋がってしまうんです。だからまずは周期に合わせたリズムで過ごすということが、不調の改善に繋がっていきます。」

——月経前のPMSなども改善されていくのでしょうか。
「私は医者ではないので自分の体験からしかお答えできませんが、無理をせず体の声を聴きながらととのえていけば、薬を飲むほどの痛みや辛い症状は緩和されていくと思います。でも、一般的に体も心も“一定の状態であることが良い”と言われることが多いですが、そもそも女性の心身の状態が一定であるということは、自然の法則からいくと不自然なんです。むしろホルモンリズムや生と死のサイクルがあるからこそ、地球全体の一定が保たれます。常に移り変わっているものを一定にしようとするのではなく、そのリズムと共に生きるライフスタイルが根本的な改善策だと信じています。

でも、社会では男性と同様な働き方を求められてしまうので、女性が心身ともに不調を感じやすい状況なんです。月経のサイクルは自然がデザインした流れなので、その通りに生きたほうがより女性の力を存分に発揮できるし、世の中のバランスも良くなると思います。そういった自然の摂理に反した行動というのは、今地球が抱えている環境問題にも繋がっていると思っています。社会の地球に対する扱い方は、女性に対する扱い方と、同じ。全部繋がっているんですよね。」

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取材時、ハワイ滞在中だった景都さん。

——女性のみならず、男性も知っておくべき叡智のように感じます。
「そうなんです。多くの人がこの流れを理解することで、みんなが生きやすくなると思っています。以前私のウェビナーを受けてくれた方が、『ウェビナーで学んだことを会社でプレゼンして、生理中に女性がお休みすることが当たり前になったんです』と報告してくれたんです。でもこれも、その方が『やっぱり休んだほうが心地よく過ごせる』ということを体感してくれたから。そのほうが会社への提案も説得性が増しますよね。だからまずは女性たちが、自分自身をケアすることから始めていってほしいなと思っています。」

——自分のケアを始めるにあたって、まずやったほうが良いことはありますか?
「最初の一歩は、“観察すること”が大切だと思います。今自分の心身の状態がどうなのかを観察して、自分に興味を持つこと。メモをしてもいいし、意識するだけでもいい。慣れてくると、意識せずとも自然と『秋冬』の時期はスローダウンができたり、準備できるようになりますよ。

私の場合はもう『今日(生理が)くるな』と感覚でわかるので、お迎えの準備をします。そして生理がきたら自分の経血を水で薄めて、キャンドルとともに祭壇に置いてお祈りをして、瞑想をするという儀式をします。そしてその経血は土に還します。家にある観葉植物でもいいです。実は経血って土の栄養になる成分が入っているんですよ。」

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——お迎えする気持ちでいるってポジティブでいいですね。
「月経は私たちの体にとって大事なプロセスなので、“ありがとう”という気持ちを込めます。そして先程もお話しましたが、何より自分が常に一定であると思わないこと。『常に元気!』ということはないんです。自分の体の声を聴いて、その状態に合わせて自分を愛でてあげてください。」

——景都さん自身は、子宮の叡智を学んでから身体の変化はありましたか?
「ありました。私も実は、以前は生理痛に苦しんでいたんです。高校生くらいの時から生理1日目は腹部の激痛、吐き気、内太ももの痛み、冷えがありました。痛み止めを飲んだり、寝込んだりするのが当たり前で。社会のリズムではなく、地球のリズムである月経周期に合わせたライフスタイル、働き方、食べ方、休み方に変え、子宮に意識を向けた瞑想を習慣的にするようになった一年くらいからだんだんと改善されてきて、今では痛み止めはいらないほどになりました。とはいえ、月経はその前の月のおさらいのようなものでもあるので、無理をしすぎていたり、冷えがたまっていたりすると、痛みとしてそれを感じることはあります。生理痛は仕方ないものだと思っている方も多いと思いますが、そうではありません。原因は人それぞれですが、改善には根本原因に気づくことが大切なんです。」

——少しずつ、自分と向き合いながら改善していくことが大事ですね。
「瞑想もおすすめです。私のインスタのIGTVでも、『子宮の誘導瞑想』というものをアップしています。生理の3日前くらいに行うと一番よいです。瞑想することで副交感神経が交感神経より優位になり、呼吸が深くなり血行もよくなります。この瞑想をやるだけで、『生理痛が緩和された』『ホルモン数値が正常になった』という声もありました。」

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とてもヘルシーで、ナチュラルな雰囲気の景都さん。 しかし、子宮の叡智を語るときの眼差しは強く、心からのメッセージが伝わってくる。
「今、私は自分自身でコントロールができる働き方なのでとても生きやすいです。もちろん、ストレスを感じることはあります。でもストレスがあったとしても自分が納得できるストレスかどうか、というところが大事なのだと思います。私のライフスタイルの基準は、『魂が喜んでいるかどうか』なんです。」

——鎌倉ではどんな過ごし方をされていらっしゃるんですか?
「自宅でも作業ができちゃう仕事なのですが、天気が良い日は朝からカフェに行って仕事をしたりします。それだけで気分転換になります。長谷にあるカフェ、『シナモンアンドモア』がお気に入りです。あとはハイキングコースを歩いたり、夏は葉山の海で泳いだり、自然に触れるようにしています。」

——素敵な過ごし方ですね。自宅からは海も見えるんですか?
「はい。家から海が見えるので、朝起きてボーッと眺める時間も好きです。鎌倉は海も山もあって、美味しいカフェもたくさんあるので、とてもリラックスができるので過ごしやすいです。」

「すべては自然から学ぶと一番わかりやすいんです。」
最後に、景都さんはそう話してくれた。
自然を観察すれば、答えがある。人間も同じはずなのに、なぜか乖離して考えがちだ。
多くの女性が、PMSや生理痛をはじめ、女性特有の不調に悩んでいる。そもそも、なぜ現代においてはそういった問題が当たり前となっているのか。
その背景や歴史、社会や自然の仕組みについては誰も教わってはこない。
フェムテック市場が盛り上がりを見せるなか、きっと一度は誰もがディスカッションをし、立ち止まってみることが大切かもしれない。

Keito Hirakawa Instagram
@paradisabykeito

Text by Sonomi Takeo